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山洋電気の製品の歴史(7)―

デジタルコントローラ Sandic PDC-300 1985年製造

山洋電気は冷却ファンやサーボシステム,ステッピングシステム,UPS,太陽光発電システム用パワーコンディショナなどの製造・販売で知られる電気機器メーカーです。
当社は1927年(昭和2年),黎明期の無線通信機用発電機におけるパイオニアとして創業しました。常に独自の道を歩み,パイオニアたらんとしてきた山洋電気の製品開発にも長い歴史があります。このコラム「山洋電気の製品の歴史」では,当時の市場や技術の背景,製品開発にかける想いなどご紹介していきます。

1960年代の終わりは,機器の制御技術にとって大きな変革のさなかだった。当社の技術も,それまでのアナログ主流から,デジタル制御の世界へ移りつつあった。

当時は,学校での講義はまだ真空管の時代であり,ようやくトランジスタやICが出始めた頃である。私が当社に入社した頃は,この頃必要な部品であった10進カウンタIC 1桁分が1万円もしていた。6桁のカウンタを構成するとそれだけで計6万円,壊すと6万円以上が吹っ飛んでしまう時代だった。
ソフトウェア制御による1軸のデジタルコントローラを開発したのは,この頃である。当初はトランジスタやICだけで制御回路を構成していたが,ハード構成による汎用性の無さに限界を感じてきたことが開発の理由だった。
開発は,当時出始めたばかりのマイコンを使用し,しかもプログラムは直接機械語で書くという,今から思うとまったく非効率的な方法でスタートした。しかし,最初に高級言語を使用しなかったことが,かえってマイコンを知る上で役立つことになった。

こうして開発したデジタルコントローラは,やがて市場に出て多くの設備に採用され,当社の主力製品のひとつになっていった。しかし,それは様々な問題を乗り越えた成果でもある。
あるとき,市場に出したデジタルコントローラに対して,顧客からクレームで呼ばれたことがあった。行ってみると,デジタルコントローラという小さな機器で大規模な機械全体を動かすという,予想を超えた使われ方をしており,背筋が寒くなったのを覚えている。中には,顧客の工場で不具合の原因を調べているうちに,深夜に一人だけとなってしまったこともある。寒さと空腹から外に出てみても,今と違い,当時コンビニなどは全くなく,雪の降る冬の街全体が静まり返っていたものだった。
場合によっては,製品自体に問題があると確認されることもある。そのときは,一刻も早く修復する必要があるため,会社に持ち帰って,担当者とともに徹夜で作業をすることも多かった。冬に徹夜をしていると,明け方近くに守衛の人がお湯を持って様子を見に来てくれたこともあった。

また,ICなどのハードによる構成と違い,ソフトウェアが組み込まれると,使い方によっては,市場に出してから1年以上経ってはじめてソフト上の不具合であるバグが発見されるということがあった。ソフトのバグは確かに不良品であり,いかに汎用性を持たせた機器とは言え,バグ混入の発見は辛い思い出である。さらにバグが発見されたときの修正を確実にするため,それまでに標準デジタルコントローラから派生していたすべてのバージョンを取り入れ,ソフトを1本化しておく必要もあった。

このような苦労を経て完成することができたのが,1軸用から多軸用までのデジタルコントローラのシリーズである。「Sandic PDC-300」もその一つで,3軸タイプである。これらのシリーズは,多くのお客さまにご採用いただき,社内設備の自動化に貢献することができた。当社において,その後のコントローラ製品の基盤となった,重要な製品群である。

(テクニカルレポートNo.35 May. 2013掲載)

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